緑茶の味をつくり出すプロフェッショナル、「茶師」の仕事


茶畑から緑茶が収穫されると、「蒸す」「揉む」「乾燥させる」などの工程を経て、「荒茶」ができあがります。このまだまだ未完成な状態の荒茶に仕上げ加工を施したものが、お店などで販売されている緑茶製品です。荒茶は、農園や種類、産地などが異なるさまざまな茶葉をブレンドして、一つの製品に仕上げることが多く、それぞれの茶葉の持ち味を引き出し、どう融合させるかで味が決まります。今回ご紹介する「茶師」は、この仕上げの段階を担う緑茶界のプロフェッショナル。卓越した味覚と感性で日々勝負する茶師とはどのような仕事なのか、ご紹介します。


茶葉の持ち味を生かすブレンドの匠、「茶師」とは?

実は、お茶屋さんやスーパーに並ぶ緑茶製品のほとんどに、茶師の手仕事が施されています。例えば「甘みが強くコクがあり、爽やかな青葉の香りが印象的な緑茶をつくりたい」。といった要望を受けた時、茶師は完成形の味を頭に思い描き、まずは荒茶を調達します。そしてブレンドして、火を入れ、一つの商品へと仕上げていくのです。1,000種類以上にも及ぶ荒茶の中から厳選することも稀ではなく、茶葉それぞれが持つ「甘み」「苦み」「渋み」「コク」「香り」といった個性をうまく調和させて、理想の一杯にようやく辿りつきます。そして茶師はこの長年の経験と研ぎ澄まされた味覚、そして感性でもって、例え茶葉の種類やできが変わっても、同じ味をつくり続けていくことができるのです。

「茶師」の華麗なる手仕事

 ■仕入れ

数多ある荒茶の中から、味、香り、茶葉の形、価格などを見極めながら、仕入れを行います。市場に出回る荒茶の数は、およそ10,000種類。これを聞くだけでも気が遠くなるような作業ですが、その中からある程度目星をつけて、荒茶のできや価格に応じて厳選します。

 

 ■合組(ごうぐみ)

違う産地や種類の荒茶を調合する作業のことを「合組」と言います。それぞれが持つ特徴をうまく生かしながら組み合わせ、新商品が目指す味わいや定番商品のいつもと変わらぬ味わいをつくり出します。特に定番商品は、その年の茶葉のできによっては、産地も種類も異なるものを使いながら、いつもと変わらぬ味に仕上げなければならず、茶師の腕の見せ所となります。

 

 ■火入れ

合組でできた茶葉を煎り、乾燥させ、味、香りを引き出していく作業が「火入れ」です。

茶葉にはもともと「青葉アルコールなど」200種類ほどの香り成分が含まれていますが、火入れをすることで香ばしく甘い香りがあらたに生成されます。そのため、弱い火入れではフレッシュ感の強い茶葉に、強い火入れでは香ばしさの強い茶葉になるのです。この火入れの妙にも茶師のセンスが光ります。

 <まとめ>

いかがでしたか?茶師は表舞台に立たない匠であるがゆえに、普段、その仕事を垣間見る機会はほとんどありません。でも何気なく手に取っている緑茶がどのように仕上げられたのか、思いを馳せることはできるはず。いくつか違う種類の緑茶を試しながら、味わいや香り、のど越しなど、茶師になった気分でノートに書き記してみるのも面白いですよ。ぜひ、茶師渾身の一杯をご家庭で茶葉から楽しんでみてくださいね。