お茶の国?コーヒーの国?アメリカの茶文化と、その歴史。


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アメリカの飲み物と言えば、コーラ、コーヒー、ソフトドリンク。どんな分野で統計を取っても常に上位に入るアメリカですが、お茶に関してはその限りではありません。しかし、近年では若者の間でお茶がコーヒーに迫る勢いなのだとか。2007年~2012年の間で16%も茶市場が拡大されているというデータもあるそうです。今回は、お茶のイメージがあまりないアメリカの茶文化をご紹介します。

アメリカでお茶ブームが到来!?

ある統計によると、アメリカ人のソフトドリンク年間消費量は216リットルにもなるそうです。つまり、いわゆるジュースを毎日欠かさずペットボトルで1本以上飲んでいることになり、肥満や糖尿病が国民病になるのも仕方のないことでしょう。しかし、近年は健康上の利点からお茶に注目が集まっているのだとか。中でも特に緑茶の需要が大きく増えています。現在はまだ消費量全体に占める割合は紅茶の方が多いものの、緑茶輸入量はこの10年間で1.8倍に伸びました。では、アメリカでお茶が注目されている事例を少しご紹介しましょう。

シリコンバレーではペットボトル茶が大ブーム!?

アップル、Google、Facebook、Yahoo、アドビシステムズなど、有名なIT系企業が集まるシリコンバレー。これら大企業のカフェテリアには伊藤園さんの「お~いお茶」という商品が置かれているそうです。元々、シリコンバレーで働くエンジニアはリフレッシュするためにエナジードリンクを好んで飲んでいたそうですが、機能を代替できる上に無糖でヘルシーなことから緑茶が大ヒットしたのだとか。もちろん、伊藤園さんの並々ならぬ営業努力のたまものであるのは言うまでもないでしょう。余談ですが、現在同地のGoogle社では1ヵ月に6万本もの「お~いお茶」が消費されているそうです。

スターバックス社のお茶専門店「Teavana」。

コーヒーチェーン大手スターバックス社が2012年にお茶専門店「Teavana」を買収し、2013年からお茶市場に参入しました。このお店は、100種類以上の紅茶をはじめ、緑茶、ウーロン茶、チャイ、ルイボス、ハーブティなど、様々な種類のお茶を楽しめるのだとか。「サムライ茶」というメニュー(?)もあり、店内では急須や湯のみなどの茶道具も販売されているようです。アメリカでのお茶への関心の高まりがうかがえる出来事だと言えるでしょう。ちなみに、同社では5年間で1000店舗の展開を計画しているとのこと。日本での出店も決まっているようですから、気になる方は続報を待ちましょう。

2. 歴史を紐解けば、アメリカとお茶の関係が見えてくる。

コロンブスが新大陸を発見したのは1492年。それから200年にわたって北アメリカにはヨーロッパの人々が押し寄せました。1600年代の北アメリカではまだコーヒーが普及しておらず、植民地時代のアメリカでは庶民の飲み物は紅茶が主流。ヨーロッパからの移民と共にお茶がもたらされていたため、当時は紅茶の国だったと言えます。しかし、アメリカ合衆国が建国された1776年の前後からアメリカ国民のお茶への関心がどんどん薄らいでいきます。紅茶の国からコーヒーの国に変わっていったアメリカのエピソードをご紹介しましょう。-

アメリカ独立の契機は紅茶!?~ボストン茶会事件~

18世紀後半、植民地争奪戦争を繰り返していたイギリスは財政が苦しくなり植民地への課税を強めました。そのひとつが「茶法」。これは、それまで横行していたオランダからの茶の密輸を禁止し、イギリス企業である東インド会社に茶の専売権を与えるもの。東インド会社は当時の市価の半値で茶を売り出そうとしたものの、「植民地の貿易を独占する第一歩になる」などの理由で、反対運動が起こりました。そんな中、ボストン港に停泊していた東インド会社の船を急進派が襲撃し、「ボストン港をティー・ポットにする」と叫びながら342箱の茶箱を海に投棄。莫大な損害を与えました。その後、イギリスは報復措置を取って植民地を屈服させようとしましたが、植民地側は反発を強め、ついに独立戦争へとつながります。このような背景で、当時のボストンの婦人たちは茶を飲まない誓いを立て、コーヒーを飲むようにしたのだとか。ボストン茶会事件をきっかけにアメリカは独立し、コーヒーの国になったのです。

幕末期に日本茶ブームが起きていた!?

ボストン茶会事件以降、アメリカではお茶よりコーヒーが好まれるようになりましたが、お茶の需要がゼロになったわけではありません。ただし、それは紅茶ではなく緑茶の話。ティーと言えば緑茶のことで、砂糖とミルクを入れて緑茶を飲んでいたそうです。実は、日米和親条約が締結された1854年以降、日本の輸出品は生糸とお茶が中心でした。輸出先の90%はアメリカで、英語でデザインされた緑茶のパッケージもあるそうです。1891年には2.4万トンの輸出を記録し、アメリカ市場において日本茶は躍進することになったのだとか。しかしその後、生産性に優れた紅茶に盛り返され、アメリカの緑茶市場は縮小していくことになりました。そして近年、アメリカでは再び緑茶に熱い視線が注がれています。2度目の日本茶ブームは、きっと一過性ではないでしょう。

(まとめ)

アメリカとお茶の関係、ご存知でしたか?知らなかった方には意外な話も多かったのではないでしょうか。第2次ブームが起こっているアメリカにも、ぜひご注目ください。