もうすぐ新茶の時期!日本茶と紅茶の「旬」のお話。


まだまだ厳しい寒さが続いていますが、皆さんお元気でしょうか?3月に入り、徐々に春らしさを感じられるようになってきました。3月は、気象庁の区分でも正式に春に分類されるそうです。そして、お茶の世界での春と言えば「新茶」。3月ごろから色々な茶園が新茶の販売予約を開始します(私たち大井川茶園も、日本屈指のお茶処「静岡」で育った茶葉を日本全国、世界に通販でお届けしています!)。ということで、今回は新茶のお話です。

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1. 日本茶の新茶について。

言うまでもありませんが、新茶とはその年の最初に収穫したお茶のこと。一般的には、立春(2月3日)から八十八夜後の5月4日前後に収穫されます(ただし日本列島は寒暖の差が激しいため、温暖な地域――例えば沖縄では3月に、鹿児島では4月に収穫されます)。基本的に日本茶は年4回摘み取られ、5月中頃までに収穫されたものを「一番茶」と言い、最初に摘み取られるため「新茶」とも呼ばれます。新茶が注目される理由は、何と言っても旬の美味しさが味わえるから。新緑のような爽やかな味と香りは、この時期にしか楽しめません。

新茶の特徴(1)渋みがなく、甘い!

お茶の木(チャノキ)は常緑樹で、冬であっても枯れることはありません。しかし成長には一定の気温と日光を必要とするため、冬の間は活動が止まってしまいます。そのため、冬季に収穫されることはありません。お茶の木はこの期間中にゆっくり休養して養分を蓄え、春に栄養をたくさん含んだ若葉を成長させるのです。このような理由から、新茶には旨味・甘味の成分であるアミノ酸(テアニン)がたっぷり。しかも、冬の間に蓄えた養分の70%が最初に摘む葉や芽に含まれていると言われています。新茶の美味しさは、科学的にも立証されていると言えるでしょう。

新茶の特徴(2)爽やかな香り!

二番茶・三番茶にはない爽やかな香りを持っているのも新茶の特徴。冬の間に蓄えたアミノ酸は香りを生み出す働きも持っていて、アミノ酸が多いほど香り高くなるというワケです。また、新茶独自の香りを全面に出すため、多くの茶園では仕上げの火入れを浅くしています。そのため、温度の高いお湯で淹れるのは避けたいところ。風味が強く出すぎないよう70~80度のお湯で淹れるようにしましょう(逆に温度が低すぎると香りが弱くなってしまうのでご注意ください)。また、茶葉の量を少し多めにするのも新茶を美味しく淹れるコツです。

健康成分・カテキンは二番茶・三番茶と増えていく!?

昔から「新茶を飲むと一年間無病息災で過ごせる」と言われています。初物に含まれる生命力を摂り入れることで元気になれると昔の人は考えたのだとか。しかし、新茶以外のお茶も健康維持成分では負けてはいません。新茶に含まれるテアニンは、日光を浴びることでカテキンに変化していくからです。カテキンは、ご存知注目の健康成分。動脈硬化や心臓病、高血圧、糖尿病などを防ぎ、その殺菌効果で虫歯やウイルス性の感染症から守ってくれているのです。カテキンは苦味成分でもあるので甘さは新茶に一歩譲ることになりますが、その分健康維持に大きな力を発揮すると言えるでしょう。

2. 紅茶の新茶について。

日本茶の旬と言えば「新茶」の時期のことですが、紅茶の世界はもう少し複雑です。日本茶も紅茶も同じチャノキから作られていますが、紅茶は亜熱帯から熱帯の様々な地域で収穫されるもの。産地の特性によって旬の時期や長さは大きく異なります。それだけに、紅茶は年間を通じて様々な地域で収穫されているのです。ここでは、代表的な紅茶の特徴が出る時期――クオリティシーズンについてご紹介しましょう。

【インド(ダージリン)】

ダージリンのクオリティシーズンは主に3回。若草の清々しい香りと軽やかな味わいのファーストフラッシュ(春摘み茶)、味・香り・コクが最も充実しているセカンドフラッシュ(夏摘み茶)、まろやかな甘みと熟成した香りが楽しめるオータムナル(秋摘み茶)に分かれます。ダージリンの特徴が最も表れると言われるのはセカンドフラッシュですが、日本人はファーストフラッシュを好む人が多いのだとか。

【インド(アッサム)】

ダージリン同様に3回のクオリティシーズンがあり、濃厚で爽やかな風味と甘い香りを持つファーストフラッシュ、芳醇な甘みクリームのような風味を持つセカンドフラッシュ、濃厚な味わいと渋みを持つオータムナルに分かれます。ダージリンに比べ、収穫時期による差異が少ないと言われています。

【スリランカ】

1年中茶摘みができることがスリランカの特徴。「最も紅茶らしい紅茶」と呼ばれるディンブラのクオリティシーズンは1月~2月。この産地特有の季節風がフラワリーな香りをつけます。「セイロン紅茶のシャンパン」とも表現される華やかな香りを持つヌワラエリヤのクオリティシーズンは2月~3月。この時期のヌワラエリヤは薄いオレンジ色の水色で、ダージリンティに似た風味を持つとされています。世界三大紅茶のひとつであるウバのクオリティシーズンは8月~9月。乾期に収穫された茶葉は甘いフレーバーと渋みを持っています。

【中国】

独特の甘い香りで「中国茶のブルゴーニュ酒」と呼ばれるキーマンのクオリティシーズンは3月~4月。ただし、20にもおよぶ複雑な工程で加工されるため、出荷は8月位に行われています。特級品は非常に高価になり、市場にもあまり出回りません。

(まとめ)

お茶の旬のお話はいかがでしたか?日本茶も紅茶も、旬のお茶は格別な趣があります。特に日本茶の新茶は年に1回しかない特別な存在。その時期にしかない味や風味を、ぜひ楽しんでみてくださいね。