お茶発祥の国・中国の茶文化とその歴史。


先日、世界最古の茶葉が発見されたというニュースが発表されました。それまで世界最古として確認されていた茶葉は北宋時代(960年~1127年)のものだったそうですが、今回発見されたものはそれより2100年以上前のもの。漢の景帝(紀元前188年~141年)の墓近くから発見されたそうです。中国はお茶発祥の地であり、世界の茶文化を語る上で欠かせません。今回は、中国の茶文化と歴史のお話をお届けします。

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 多様な個性が混じり合う、ふところの深い中国の茶文化。

日本茶も紅茶も中国茶も、すべてツバキ科のチャノキの葉・茎から作られています。葉や茎を摘んだ後の加工方法が違うため、日本茶・紅茶・中国茶に分かれていくのです。チャノキの葉や茎は摘み取った後どんどん酸化発酵していきますが、酸化させずに乾燥させたものが日本の緑茶(無発酵茶)。葉を傷つけることでしっかり酸化させたものが紅茶(完全発酵茶)。発酵度を6種類に分類し、千数百とも数千とも言われる多様な個性を持っているのが中国茶です(半発酵茶と言われることも多いですが、厳密には中国茶にも無発酵茶・完全発酵茶があります)。それでは、中国茶の基本をご紹介しましょう。

【中国茶の種類は大きく分けて6+1種類!】

中国茶は、発酵度の浅いものから緑茶・白茶・黄茶・青茶・紅茶・黒茶に分類されます。発酵が浅いものは元の葉の色に近く、発酵が進むに連れて紅色に変化していくため、茶葉の色でおおよその味わいが想像できると言えるでしょう。これらに花茶(緑茶や青茶などにジャスミンやバラの香りを移したお茶や、花を乾燥させて茶葉の代わりに用いたもの)を加えて分類するのが一般的な中国茶の大分類。そして、緑茶の中にも龍井茶や碧螺春といった銘柄があり、更にひとつの銘柄であっても産地や収穫時期、等級などによって分類されるため、最終的には千以上の種類に分かれるというわけです。

 【日本茶と中国茶の違いとは!?】

日本茶と中国茶の違いは、異なる製法を用いていることで生まれます。大きな違いは、酸化の止め方。日本茶のほとんどは茶葉を蒸すことで、中国茶では茶葉を炒ることで酸化を抑えています。この違いによって香りや風味、味わいが変わってくるというワケ。日本茶は味わいを最優先に、中国茶は香りを最優先に作られているのです。また、これら製法の違いもあって、中国茶は日本茶に比べてじわじわと味が出るという特徴を持っています。それだけに、最初は薄いと感じる人も多いようです(4~5煎は飲めるので、その分長く楽しめるとも言えます)。

 神話の時代から始まる中国茶の歴史。

現在の中国において、お茶は国の飲料「国飲」に位置付けられているそうです。2007年~2009年の統計では国内で約87万トンの茶葉が消費され、これは世界第1位の消費量(ちなみに日本は約13万トンで第5位)。国内の茶館(茶や点心を扱う飲食店)は10万軒を超え、茶葉専門店もいたるところに存在します。また、北京オリンピックや上海万博をはじめ様々なイベントで中国茶の文化が世界に発信され、学校教育にも茶文化の授業が設けられているのだとか。このように茶文化の育成・発展に力を入れ、また国外にも誇る国だけに、中国茶には深い歴史があります。ここでは、代表的な歴史のトッピックスをご紹介しましょう。

 【茶葉発祥の地は、メコン川上流にある雲南省!】

お茶に関する最も古い記述があるのは、「神農本草経」という本草書。三国時代(184年~280年)に成立した医学の本ですが、神農(古代中国の神話伝説に登場する帝。医薬と農業を司る神としても信仰されている)の逸話としてお茶が登場します。これによってお茶の起源は紀元前2700年頃にまでさかのぼると考えられているのだとか。毒に当たった時に茶葉を噛んで解毒していた神農のエピソードが描かれています。また、茶葉の起源には諸説ありますが、原産地は現在の雲南省西南地区だという説が有力。雲南省はメコン川の上流にあり、現在もチャノキの古樹が数多く見られます。

【世界最古の茶の聖典「茶経」!】

薬として利用されていたお葉が飲料へと変わり始めたと言われているのが、紀元前1世紀ごろ。この当時はまだ栽培法が確立されておらず、自生した茶葉を使って特権階級の人々だけが楽しんでいたようです。ただし、記録によれば既に茶道具は存在していたのだとか。そしてその後、唐の時代(618~907年)に飲用のお茶が庶民の間にも広まっていったと言われています。世界最古の茶の専門書「茶経」が記されたのは、この唐の時代。陸羽という文人が、茶の歴史、道具や製法、産地、淹れ方や飲み方、心得などを記し、文化にまで高めました。ちなみに、日本にお茶が伝えられたのもこの頃です。

 【中国茶文化が華開いた宋・明・清の時代】

宋の時代以降は、多様な文化が華開いていきます。文人たちはお茶と一緒に詩や書、絵などをたしなみ、哲学を論じました。また、この頃には茶筅(茶碗の中をかきまぜる茶道具)が伝わり、抹茶スタイルでお茶を飲むようにもなったそうです。明の時代になると、それまで行ってきた蒸し製法が炒り製法へと変化し、茶葉の質も変わりました。時の皇帝がより美味しいお茶を求め、様々な革新が起こったのです。花茶や烏龍茶が誕生したのも明の時代でした。清の時代になると、茶器は現在使われているものとほぼ同じになり、市場では六大茶類が販売されるようになります。茶文化が描かれた詩文・歌舞・戯曲などが多数作られ、260ヵ所以上お茶についての描写がある「紅楼夢」という有名な小説も描かれました。こうして中国茶文化は隆盛を極めることになったのです。

 (まとめ)

中国茶の文化や歴史はいかがでしたか?かいつまんでお話ししましたが、中国茶文化は非常に長い歴史を持つだけにこのブログでは書ききれなかったこともたくさんあります。気になる方は、中国茶を片手にのんびり調べてみてください。