イギリスも、アメリカも、ロシアも、チベットも。様々な国の茶文化をご紹介します!


main_20150313

日本茶も紅茶も中国茶も、全てチャノキという植物が原材料です。中国原産のこの植物は、今やアジアだけでなくアフリカなどでも栽培され、世界中にお茶を届けるようになりました。日本に茶文化が入ってきたのは、(諸説あるようですが)第18回目の遣唐使が帰国した806年。空海や最澄などの僧が仏教の経典と共に持ち帰ったことが始まりとされています。

当時は中国文化の模倣でしたが、長い時間を経て日本国内で茶が栽培されるようになり、独自の茶文化を発展させていくことになりました。茶道という芸術も生まれ、現在では世界から認知される日本独自の文化として知られています。もちろん、茶文化が発達したのは日本だけではありません。世界のあらゆる地域で、それぞれの茶文化があります。今回は世界の茶文化事情をお届けします。

1.茶と言えば、英国紅茶。伝統のティーウィズミルク。

紅茶と言えばイギリスを連想しますが、実はそれほど長い歴史を持っているわけではありません。イギリスを含めたヨーロッパで茶が飲まれるようになったのは、約400年前。欧米では茶の栽培ができないため、大航海時代に中国や日本を発見(?)してはじめて茶に触れるようになりました。イギリスでも当初は緑茶が飲まれていたようですが(緑茶に砂糖を入れて飲んでいたそうです!)、次第に自国の水に合う紅茶を輸入するようになっていきます。緑茶よりもタンニン(渋み成分)が多い紅茶は砂糖との相性が良く、またその渋みをやわらげるタンパク質が豊富なミルクを入れて飲むスタイルが定着していったと考えられています。こうして、イギリスで紅茶と言えばミルク入りを指すようになりました。余談ですが、「ミルクティー」は和製英語。英語圏では「ティーウィズミルク」と言います。

本場のティーウィズミルクとは?

イギリスの水は硬度120以上(日本の水道水は硬度60~70)。高度が低いほどタンニンが抽出されるため、イギリスでは風味をしっかり出してもそれほど渋みを感じる紅茶にはなりません。一方、しっかり風味を出すだけに、イギリスの紅茶はとても水色が濃くなります。紅よりも黒に近い水色だけに(それゆえにイギリスでは、ストレートティーのことをブラックティーと呼びます)、ミルクを入れると非常に美しいクリームブラウンになるのです。また、ミルクも日本とイギリスでは大きく違います。イギリスのミルクとは、低殺菌のノンホモ牛乳のこと。日本の牛乳とは加工方法が違い、生乳に近い味わいを持っています。このミルクによって、キレの良いティーウィズミルクになります。スコーンやケーキといった脂肪の多い料理を食べた時、しっかり流すという役割を果たしているのです。

英国伝統のティーウィズミルクの淹れ方

  1. 茶葉を多めにし、硬水でブラックティーを作ります。しっかり蒸らして風味とコクをひきだしましょう。
  2. ティーカップに熱湯を注いで1~2分温めます。
  3. お湯を捨て、常温のミルクを入れましょう。 ※低温殺菌ノンホモ牛乳は、Web通販で購入できるようです。
  4. ティーストレーナーを使い、ブラックティーをミルクの上から注ぎます。 ※ミルクを先に入れる(牛乳タンパクに変性がおきにくい)のか、紅茶を先に入れる(ミルク量が調整しやすい)のか、イギリスでは長年論争が続きてきました。英国王立科学協会の発表により、先にミルクを入れることで一応の決着がついたとされています。
  5. 9分目までたっぷり注ぐと、常温のミルクと混ざっても適度な熱さになります。

2.その他の国にお茶事情。

茶文化が独自に発展したのは、イギリスだけではありません。産地であるアジアはもちろん、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、中近東、それぞれが独自の味を持っています。ほんの一部ですが、ご紹介しましょう!

アメリカと言えばアイスティー

アイスティーは、なんとアメリカ発祥。1904年の夏にセントルイスで万国博覧会が開かれた際、商店見本市に出展していた茶商が機転をきかせて紅茶を冷やしたことが始まりだと言われています。現在もアメリカで消費されるお茶のほとんどがアイスティーで、バラエティも豊か。緑茶に梅や朝鮮人参を加えたもの、カフェインを抜いた緑茶、ビタミンやミネラルを増やした紅茶など、様々なものがあるようです。

ロシアはもちろんロシアンティー

サモワール(湯沸かし器)で淹れた紅茶を、ジャムや蜂蜜、砂糖を舐めながら飲むのがロシアンティー。気温が低いロシアでは、ジャムを入れることで紅茶の温度が下がるのを敬遠したことからこのスタイルが生まれのだそうです。余談ですが、紅茶にジャムを直接加える飲み方は、ウクライナやポーランドの風習だとか。

チベットのバター茶

黒茶(プーアル茶)を煮出し、ギイと呼ばれるバター(ヤギやヤクなどの乳で作ったもの)や岩塩などを加えてよく練り上げたもの。高地に住む人々の塩分補給の役割も持っているため塩辛く、スープに近い味だと言われます。ギイの風味も個性的で、非常に珍しい飲み方だと言えるでしょう。モンゴルやブータン、ネパールなどでも飲まれているようです。

スリランカのキリテー

スリランカのミルクティー。同国は酪農が盛んではないため、生乳ではなく粉ミルクやコンデンスミルクを使って作ります。砂糖やコンデンスミルクをたっぷり使うので、非常に甘い仕上がりに驚くことでしょう。また、何度もコップに移し替え、空気を含ませるのも特徴です。チャイとは異なり、スパイスは入れません。

【インドのマサラチャイ】

深い銅の鍋で紅茶を煮立て(露店の場合はクリという素焼きの器を使うことが多いようです)、すりつぶしたスパイスや牛乳、ざらめの砂糖を加えたもの。また、キリテー同様何度かコップに移し替え、泡立てるのも特徴です。スパイスはショウガ、カルダモン、シナモン、コショウ、クローブなどなど。甘さとスパイスの混じり合う風味に、日本人のファンもたくさんいます。

(まとめ)

今回は、色々な国の茶文化をご紹介しましたが、あくまで入門編。日本の茶道にはお茶の味だけでなく、心の在り方や、作法、茶器の愛で方、生け花の技術など、様々な要素があります。総合芸術とも言える日本の茶道ほどの奥深さがあるかは分かりませんが、海外の茶文化にもきっと味や風味以外の要素があるはず。興味を持っていただけたなら、ぜひ色々調べてみてください。